羊毛フェルト

羊毛フェルトの目の付け方|さし目とグラスアイ

更新: 小野寺 つむぎ
羊毛フェルト

羊毛フェルトの目の付け方|さし目とグラスアイ

羊毛フェルトの動物制作では、目の位置がわずかにずれるだけで、頭の形が整っていても「思っていた子と違う」印象になりやすい。教室で顔まではかわいくできたのにと落ち込む生徒を何十人も見てきた経験からも、結果を左右するのは目のパーツ選びとボンド前の仮置きだと分かります。

羊毛フェルトの動物制作では、目の位置がわずかにずれるだけで、頭の形が整っていても「思っていた子と違う」印象になりやすい。
教室で顔まではかわいくできたのにと落ち込む生徒を何十人も見てきた経験からも、結果を左右するのは目のパーツ選びとボンド前の仮置きだと分かります。
さし目、グラスアイ、羊毛の刺し目にはそれぞれ向き不向きがあり、3.5mmや4.0mm、虹彩サイズのような数値で選ぶだけで迷いはかなり減るでしょう。
左右非対称、目の沈み、目が取れるといった失敗も、順序を整えて進めれば手元の作品を救えるところまで持っていけます。

目のパーツ3種の違いと選び分け

目のパーツは、羊毛フェルトの動物では顔つきの決め手になります。
頭の造形が整っていても、ここで作風と合わない部品を選ぶと、作品全体がちぐはぐに見えやすいのです。
さし目、グラスアイ、羊毛の刺し目はそれぞれ光の拾い方と質感が違うので、最初に「どんな表情にしたいか」を決めておくと迷いません。

さし目:ツヤのある球面でクリッとした目になる

さし目(ソリッドアイ)はプラスチック製で、球面のツヤが光を一点で受けるため、目がぱっと立って見えます。
デフォルメの効いたマスコットや、丸顔の犬猫に入れると、少ない造形でも「かわいい」が伝わりやすいのが強みです。
裏側の軸を土台に差し込んで固定する構造なので、位置が決まりやすく、初めてでも扱いやすい部類でしょう。

初めて猫を作ったとき、リアルさを出したくて高価なグラスアイを買ったのに、頭の造形が追いつかず、目だけが浮いて見えたことがあります。
結局さし目で作り直したら、表情がすっとまとまりました。
パーツは単体で選ぶものではなく、顔全体の完成度に合わせるものだと、そこで痛感しました。
かわいい系を素直に作りたいなら、おすすめです。

価格も選びやすさにつながります。
さし目は1ペア100〜200円台なので、サイズ違いを複数そろえて仮置きしやすいです。
特に初めての一体では、数を試せることが失敗の少なさに直結します。
まずはここから始めてみてください。

グラスアイ:虹彩の奥行きでリアルな生き物感が出る

グラスアイはガラス製で、虹彩の奥から奥行きと透明感が立ち上がるため、写実的な猫、犬、野生動物に向きます。
表面の光り方がさし目とは違い、目玉そのものに湿度があるように見えるので、作品を「ぬいぐるみ」から「生き物」に寄せたいときに効きます。
ワイヤーの先に球が付いたタイプと、半球のカボション型の2系統があり、後者は自分で虹彩を描いて自作する余地もあります。

ただし、価格は1ペア1,000円前後からで、さし目と比べると約10倍の差があります。
しかも作家の手作り品が多く、同じサイズでも表情の出方に個体差があるので、見た目の完成度を引き上げる代わりに、選ぶ目も必要になるのです。
私はこの差を「高いから最後に使う」ではなく、「顔の設計が固まってから使う」順番だと考えています。
リアル系で作品として仕上げたいなら、こちらを選びましょう。

羊毛の刺し目:軸がなく小さな子どもの作品にも向く

羊毛の刺し目は、黒や濃色の羊毛をそのまま刺して作る方法です。
軸もガラスもないため、触ったときの異物感が少なく、小さな子どもが使う作品や、誤飲リスクを避けたい贈り物に向いています。
質感が体毛と同じ方向にそろうので、ふんわりした作風では目だけが強く浮かず、全体の空気に溶け込みやすいのも利点です。

教室で3歳の子への贈り物を作る生徒に、さし目ではなく羊毛の刺し目を提案したことがあります。
軸がないぶん安心感が増し、しかも目の素材感が体の羊毛とそろったことで、かえって作品のまとまりが出ました。
結果的にその生徒の一番の作品になり、目の選び方が安全性だけでなく仕上がりにも直結すると実感した場面でした。
子ども向けや柔らかい雰囲気を狙うなら、こちらがぴったりです。

選び分けの軸は、作風、安全性、予算の3つです。
かわいい系で費用を抑えたいならさし目、リアル系で表情を作り込みたいならグラスアイ、子ども向けや誤飲を避けたいなら羊毛の刺し目、と最初に決めてしまうと、以後の顔づくりがぶれません。
迷ったときほど、目から逆算してみてください。

サイズと位置で表情が決まる仕組み

羊毛フェルトの目は、頭の造形が整っていても、直径・間隔・高さのどれか1つがずれるだけで表情が崩れます。
だからこそ、感覚ではなく作品サイズから逆算して決めると迷いにくいです。
さし目でもグラスアイでも、先に「どんな年齢感に見せたいか」を決めてから数値を当てると、顔つきが安定していきます。

作品の大きさから目の直径を割り出す

手のひらサイズの動物マスコットでは、さし目は3.5mmまたは4.0mmが定番です。
頭頂までの高さが5cm程度なら約4mm、10cm前後なら約6〜8mmを起点にすると、作品の大きさと目の存在感が釣り合います。
大きめの目は幼く、かわいらしく寄り、小さめの目は落ち着いた大人顔に転ぶので、まず年齢感を先に決めるのがぶれない選び方です。

0.5mmの差を軽く見てはいけません。
3.5mmと4.0mmは数字だけ見ればわずかでも、同じ顔に仮置きすると別の生き物に見えるほど印象が変わります。
教室で同じウサギの頭を6個用意し、3.0/3.5/4.0/4.5mmのさし目を順に入れて見せたとき、生徒全員が「4.0mmが一番この子らしい」とそろって答えました。
説明より現物の比較が強い。
買うときは1サイズだけでなく前後のサイズも並べて、真正面から見比べると失敗が減ります。

グラスアイはアイサイズではなく虹彩サイズで探すのがコツです。
虹彩サイズ=アイサイズ×0.5+1mmが標準で、16mmなら虹彩9mm、18mmなら虹彩10mmが目安になります。
手作りの個体差まで見込むなら、アイサイズの名前より虹彩の大きさを基準にしたほうが、仕上がりのズレを小さくできます。

目の間隔:離すと幼く、寄せると凛とした顔になる

目の間隔は、顔の年齢感をいちばん素直に動かす要素です。
離して付けると顔の中心が広くなり、赤ちゃんのような幼い印象になります。
逆に寄せると目元が締まり、凛とした落ち着きが出ます。
かわいさを前面に出したいなら少し広め、知的さや芯の強さを出したいなら少し狭め、と考えると迷いません。

自分の猫をモデルにしたとき、写真から目の間隔を頭の幅に対する比率で測ってから配置したら、それまで出なかった「うちの子っぽさ」が一気に立ち上がりました。
実物写真を手元に置き、頭幅との比率で見ると、感覚では拾いきれない個体差が見えてきます。
猫は比較的離れ、犬種によっては寄っているなど、実物の比率には明確な差があるので、モデルにする動物の写真を測ってから置くと説得力が出ます。
おすすめです。

目の高さ:低い位置は子ども顔、高い位置は大人顔

高さも間隔と同じで、わずかな差が印象を大きく変えます。
顔の中で低い位置に置くと、頬の面積が強調されて子どもらしい丸い顔になります。
高い位置に上げると視線が上向きに締まり、大人っぽく理知的な雰囲気になるのです。
デフォルメ作品では、あえて低めに置いたほうがかわいさが出る場面も多いでしょう。

ここで大切なのは、リアル比率だけに縛られないことです。
実物に忠実に見せたい作品では高低差を控えめにし、マスコットらしい愛嬌を強めたいなら少し低く置いてみてください。
教室でも、目の位置を1mm単位で上げ下げするだけで表情が変わるので、仮止めの段階で真正面、斜め、真横の3方向から見て決めるようにしています。
数値で置き、見え方で微調整する。
この順番がいちばん失敗しにくいです。
試してみてください。

さし目の付け方:仮置きから固定まで

さし目は、いきなり深く固定するより、浅い印から順に詰めていくほうが失敗が少ない工程です。
位置を先に決め、仮置きで顔全体のバランスを見てから木工用ボンドで留めれば、左右のずれや傾きを直しやすくなります。
教室でも、ここを急いでボンド付きで差し込んだ結果、抜こうとして羊毛ごと傷める例が何度もありました。
手順の順番そのものが、仕上がりの表情を守る鍵になります。

Step1:目打ちで位置に印を付ける

最初は穴を貫通させず、目打ちで浅い印を付けるところから始めます。
小さな印なら、もし位置が気に入らなくても、周囲の羊毛を軽く刺してならせば目立ちにくく戻せるからです。
逆に最初から深く貫通させると土台の繊維が崩れ、直すたびに顔が痩せて見えます。
ここは「抜き差しできる余地」を残す段階だと考えると進めやすいでしょう。

印を付けたら、片目ずつ仕上げるのではなく、左右の位置関係を先にそろえます。
両方に印が入った状態で少し離れて眺め、間隔と高さを顔全体で確かめると、目だけを見ているときよりずれに気づきやすいです。
人の目は左右差に敏感なので、パーツ単体ではなく「顔としてどう見えるか」に視点を切り替えるのが近道です。
これはおすすめです。

Step2:仮置きして表情を決める

印が決まったら、ボンドは付けずに軸を差し込んで仮置きします。
この段階なら何度でも抜き差しできるので、少し上に振るか、わずかに内寄りにするかといった微調整を落ち着いて試せます。
真正面だけで決めてしまうと、完成後に斜め45度から見たとき、思ったより眠そうだったり、きつく見えたりするものです。
真正面、斜め45度、真横の3方向を見比べると、立体の表情はずっと読みやすくなります。

教室を始めた頃は、仮置きを飛ばしてボンド付きで差し込み、気に入らず抜こうとして羊毛ごと引きちぎってしまう事故が続きました。
それ以来、「ボンドは最後」と口酸っぱく伝えるようになり、同じ失敗はほぼ起きなくなっています。
焦って固定するより、いったん外せる状態で表情を見切るほうが、結局は早いのです。
ここは必ず試してみてください。

Step3:軸にボンドを付けて差し込み固定する

納得できたら、軸の根元に木工用ボンドか手芸用ボンドを少量だけ付けて差し込みます。
接着剤は木工用に統一するのが無難で、瞬間接着剤は使いません。
以前、自分の作品でアロンアルファを使ってしまい、目の周囲の羊毛が硬い板のようになって、うっすら白く変色しました。
丸一日かけて作った顔が数秒で台無しになったので、あれ以来、接着は木工用に決めています。

ボンドで固定する意味は、見た目を整えるだけではありません。
差し込んだだけの状態は、持ち歩きや日々の接触で軸が抜けたり、少しずつ傾いたりしやすいからです。
乾くまでは触らず、顔を上向きにして置いておくと、重力でずれるのを防げます。
接着後はそのまま数時間から一晩ほど置き、動かさずに固まる時間を確保しましょう。

グラスアイ・カボションを埋め込む手順

グラスアイやガラスカボションを埋め込む工程は、目そのものを入れる作業というより、頭の芯を先に整えてから表情を決めていく作業です。
土台がふわついたままではワイヤー付きの目が傾きやすく、カボションも浅い切り込みだと収まりが悪くなります。
先に固定の前提を作り、そこへ虹彩とまぶたを重ねる順番にすると、最後の顔つきが落ち着きます。

土台に切り込みを入れて埋め込む

カボション型を使うときは、土台にハサミで切り込みを入れ、カボションがちょうど収まるところまで少しずつ広げていきます。
最初から大きく切ると戻せませんが、小さく入れておけば押し込んだあとで微調整がきくので、仕上がりの誤差を抑えやすいのです。
収まったら裏面にボンドを回し、表から見えないところでしっかり固定します。
ワイヤー付きのグラスアイも同じで、ワイヤーを土台の奥まで差し込むなら、先に頭の芯が締まっていなければなりません。
数日後に片目だけ内側へ傾く失敗を経験すると、目は造形の最後ではなく、固い土台の上に乗せる工程なのだとよくわかります。

ガラスカボションで虹彩を自作する

虹彩を自作するなら、まず画用紙に目のデザインを描き、その上に透明な接着剤を塗ってガラスカボションを重ねます。
ここで気をつけたいのは、カボションを真上から押さえ込まないことです。
以前、接着剤を塗ってからぐっと押し付けてしまい、中央に気泡が残ったうえに立体感まで消えたことがありましたが、端から寝かせるように乗せる形に変えた途端、奥行きのある目に変わりました。
カボションの厚みがつくる光のふくらみは、押し潰すと途端に平たくなるので、乗せる動きそのものが仕上がりを左右します。
自作の利点は、既製品にない色や瞳孔の形を作れることにもあります。
猫の縦長の瞳孔、犬の丸い瞳孔、ハイライトの入り方まで描き分ければ、その子らしさが目元に宿ります。

まぶたを刺し付けて開眼させる

目を埋め込んだら、上まぶたと下まぶたを刺し付けて開眼させます。
芯材または羊毛をまぶたの位置に置き、ある程度固めてから、目が見える範囲を少しずつ調整していきます。
ここで一気に削ると目の上の覆いが薄くなりすぎるので、眠そうな顔に寄せるのか、見開いた印象にするのかを見ながら段階的に進めるのが向いています。
まぶたの被り具合は表情の決め手ですから、左右を交互に見比べ、数ミリ単位で整えていくと安定します。
焦らず少しずつ進めましょう。

うまくいかないときの原因と直し方

左右の刺し目は、顔の上で整えようとすると少し直しただけで全体のバランスが崩れやすいです。
先に左右を別々のパーツとして作り、手のひらの上で高さと大きさをそろえてから付けると、目だけでなく顔全体の見え方まで安定します。
さらに、うまくいかない原因は目そのものではなく、刺し方や頭の丸みにあることも少なくありません。

左右で形も大きさも違ってしまう

左右差が出るときは、本体に直接刺してその場で合わせようとしていることが多いです。
羊毛の刺し目は小さいので、片方を直すたびにもう片方との比較ができなくなり、気づくと左右で厚みも丸みもずれていきます。
だからこそ、目玉は左右で別々に作り、まず手のひらの上で見比べてから顔へ付ける流れに変えるとよいでしょう。
付けたあとでも、大きすぎるほうは押し込むように刺して縮め、小さすぎるほうはごく少量の羊毛を足して寄せていけば整います。
片方だけを一気に仕上げず、左右を交互に見ながら少しずつ近づけるのがコツです。

目の周りがくぼんで暗い顔になる

目の周りが黒く沈んで見えるのは、針を深く刺しすぎて周囲の羊毛が内側へ引き込まれているからです。
表面を作る場面では、縫うように浅くチクチク刺すほうが面が荒れず、光もきれいに乗ります。
自分の作品でも、ここで焦って何度も刺し直したせいで、かえって「こわい顔」になってしまったことがあります。
ところが、針を浅くして同じ場所をやさしく整え直しただけで、同じ羊毛、同じ位置でも表情は驚くほどやわらぎました。
すでにくぼんでしまった場合は、周囲に少量の羊毛を足してから浅く刺し、目の面を少し持ち上げると戻しやすいです。
刺し方そのものが表情を作る、と考えると扱い方が変わります。

さし目が取れる・傾く

さし目が取れたり傾いたりするときは、ボンドが足りないか、下穴が大きすぎて軸が遊んでいることが原因です。
抜けたまま差し直してもまた動くので、先に穴の周囲を少し刺して締め、受け口を小さくしてから軸にボンドを付けて戻すと固定しやすくなります。
穴が広いままだと、見た目だけ整っても中でぐらつきが残り、少し触れただけで向きが変わってしまいます。
固定は「差すこと」より「受ける側を整えること」が先です。

どうしても表情が決まらないときは、目ではなく頭の造形を見直すと道が開けます。目は顔の面に乗るものなので、頬やマズルの膨らみが左右で違えば、正しい位置に置いても歪んで見えるからです。実際、何度直しても左右で違うと悩んでいた作品を真上から見たら、頬の膨らみが片側だけ大きく、そこを整えただけで目に触れずに左右差が消えました。まず顔全体を真上と真下から見て、どこが本当の原因かを探してみてください。

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小野寺 つむぎ

羊毛フェルト教室を主宰して8年。年間50回以上のワークショップで培った「初心者がつまずくポイント」の知見を活かし、失敗しにくい手順の設計を得意とする。

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